新材料情報
2023.08.28
あなたの世界をちょっとヨクスル~AGLRフィルム編~
今回取り上げるのは「AGLRフィルム」です。「AGARフィルムとただの1文字違い?」と思う方もおられるかも。しかし、この1文字にAGLRフィルムの大きな特色が隠されています。
AGLRフィルムとは?
眩しさを防いで反射も低減
AGLRフィルムは「防眩(眩しさを防ぐ)」と「低反射」の機能を兼ね備えたフィルムです。AGが「防眩」で「Anti-Glare」の略で、LRが「低反射」で「Low Reflection」の略です。
たとえばカーナビゲーションシステムの地図が見にくい、野外でスマートフォンが見にくいと困ったことはありませんか。これは光が画面に映りこんで眩しかったり、反射したりするのが原因。そこで、AGLRフィルムを貼って画面を見やすくします。
AGARフィルムの有無の違い
メーターパネルを使って比較をしてみましょう。
①AGARフィルムがない場合
メーターパネルにAGARフィルムを貼らずにLEDライトを手に当てた反射光を見ると、画面に手が映り込んでいます。また、太陽光相当のLEDライトを当てると、光が反射して画面が見えなくなりました。
LEDライトを当てた反射光の映り込み(フィルムなし)
太陽光相当のLEDライト反射
私たちの目は光の波を捉えて、色や形を認識しています。図のようにAGARフィルムなしの画面では、反射した光は一定の方向に反射して、そのまま目に届きます。すると、明確に「手や周りのものが映っている」と認識され、画面を見にくく感じ、眩しさも感じます。
②AGARフィルムがある場合
メーターパネルにAGARフィルムを貼ってLEDライトを手に当てた反射光を見ると、画面への手や周りのものの映りこみはとてもぼんやり。AGARフィルムが太陽の光の影響を受けにくくしました。
LEDライトを当てた反射光の映り込み(フィルムあり)
光の「波」の性質を利用したAGLRフィルム
基本原理はAGARフィルムと同じ
AGは「光の波をあちこちに散らす」、LRはAARと同じく「光の波をずらす」。この仕組みで画面への光の映り込みを防止しています。では、ARとLRの違いはどこにあるんのでしょうか。
ARとLRの違いは機能とコストの差
AGARフィルムとAGLRフィルム、AとLの違いは機能性とコストの違いです。とある研究資料によると(*)、ARでは約4%ある外からの光の反射を約0.3%まで低減できるそうです。そこまで低減できる素材や技術を使用するのです。そのため、コスト的にはかなり高価となります。一方、LRは約4%ある外からの光の反射を0.7~1%程度まで低減できるそうです。LRはARよりも反射防止機能が多少、劣るわけです。しかし、コストはARよりも安価になります。
*=『LCD用偏光フィルムの高機能化と新しい展開』(住友化学工業株式会社)P4より
AGLRフィルムの今後
幅広い活用が続く
AGLRフィルムはAGARフィルムよりもやや機能が劣るものの、低コストでの製造が可能です。そのため、幅広い活用が今後も続くことが見込まれます。
参考資料
https://www.toppan.co.jp/electronics/functionality_film/anti_reflection_film/
https://www.dnp.co.jp/biz/solution/products/detail/1190628_1567.html
https://sowa.gr.jp/product/192/#single_top
https://www.suntech-web.jp/film